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芸術の秋ということで、大好きなアンドリュー・ワイエスについてつらつらと。
アンドリュー・ワイエスについてつらつらと。
もうすっかり秋ですね。
「秋」といえば、あき竹城。
もとい、
「芸術の秋」ということで、雑記ブログらしくアートについてです。(柄にもないですが)
今回は、ジブンの大好きな画家、アンドリュー・ワイエスについて、つらつらと書いてみようと思います。
アンドリュー・ワイエスの描く世界
アンドリュー・ワイエス(Andrew Newell Wyeth / 1917-2009)は、生まれ故郷でもあるペンシルヴェニア州と別荘のあるメイン州の田舎町に暮らし、アメリカの原風景とそこで暮らす身近な人々を描き続けた、アメリカン・リアリズムの代表的な画家。
ワイエスの描く抒情詩的な風景と人物の表情は、人の心に深く響く「マジック・リアリズム」と評され、世界中の人々から愛されています。
幼いころから病弱だったワイエスは学校に通うことができなかったので、挿絵画家の父親から絵画技術を学び、ほとんど独学ながらも、ワイエスの描く水彩画は早くから人気を博したといいます。
代表作でもある「クリスティーナの世界」(1948年)は、教科書にも載った有名な作品なので、観たことがある人も多いのでは。
ピンクのワンピースを着た女性が、枯れた草原に横たわり遠くの農家を見つめる姿を後ろから描く。
ちょっと不思議な構図のこの絵には、ワイエスの深いメッセージが込められています。
モデルとなったアンナ・クリスティーナ・オルソン(実際には妻のベッツィの体を描写)は、変性筋疾患を患っていて歩くことができません。
弱々しく華奢な両足に対して、どこか力強さを感じる両腕との対比。
ワイエスはいいます。
「彼女は肉体的には制限されているが、精神的には決して制限されているわけではない」
ワイエスの作品には、クリスティーナのように障害を持つ女性や、人種差別が横行する時代に黒人男性を描くなど、弱者に対する優しい人柄が現れています。
ワイエスの描く世界は、どこか郷愁を感じながらも、見る人の想像力を深くかつ繊細に刺激し、不思議な感覚を与えます。
その反面、ワイエスのテンペラ画や水彩画から感じる光と風の質感が、観ていてとても心地よいのです。
ワイエス作品との出会い
ジブンがワイエス作品を好きになったのは、洋書屋で「The Helga Pictures」という画集の表紙を目にしたときからです。
その表紙に描かれた、きつく編み込んだおさげ髪の女性の横顔。繊細なリアリズム描写で浮き上がる不思議な表情とその伏し目がちな視線に一瞬でとりこになり、ペーパーバック版でしたがおもわず衝動買いをしてしまいました。
この画集では、ヘルガ・テストーフという女性を中心に、ヘルガが暮らす町や風景、そしてヘルガの髪の毛の一本一本から皺(しわ)のひとつひとつまで、繊細な描写で写実的に描かれていて、またひとつの作品が完成にいたるまでの習作やスケッチも収められています。
このヘルガシリーズの作品群からも、ヘルガという女性がどういう人生を送ってきたのか、想像を掻き立てられながら作品に引き込まれてしまう、不思議な感覚があります。
実はこのヘルガシリーズ、15年間にもおよぶ制作期間中、妻のベッツィには内緒で作品を描きためていたらしいです。
最期の展覧会「アンドリュー・ワイエス-創造への道程(みち)」
ワイエスの本物の作品に初めて触れたのは、かれこれ12年前のこと。
2009年1月4日から愛知県美術館で開催された「アンドリュー・ワイエス-創造への道程(みち)」展でした。
忙しさにかまけて、結局最終日間近になってしまいましたが、とても楽しみにしていたので心躍らせながら会場に入りました。
会場へ入るなり、Bruce Weber撮影の肖像写真が大きく飾られており、
その写真の下には、黒い喪章が…。
「2009年1月16日、アンドリュー・ワイエス氏が亡くなりました。ご冥福をお祈りいたします」
後で知ったのですが、病気を患っていて、睡眠中に眠りながら亡くなったそうです。享年91歳。
事実上、ワイエス自身が内容に関与した展覧会は、この展覧会が最後となってしまったのです。
展覧会のタイトル「創造への道程(みち)」の名に相応しく、ワイエス自身がその手の内を見せるかのように、これまで公開せずに保管してきた素描や習作が、完成作とともに展示されていました。
今思うと、この展覧会はワイエスからの最期のメッセージだったのかもしれません。
会場内で上映されていたインタビュー映像では、とても元気な姿だったのに、ほんとうに残念です。
きっと、天国でも「創造への道程」は果てしなく続いているのでしょう。
あらためて、ご冥福をお祈りいたします。
ワイエスを感じる映画「柔らかい殻」
ワイエスが直接関わった作品ではないですが、1990年に公開された「柔らかい殻」という映画を観たとき、その映像美がまるでワイエスの絵画のようだったので、ご紹介しておきます。
柔らかい殻
THE REFLECTING SKIN(1990年・イギリス)
監督・原作: フィリップ・リドリー
出演: ジェレミー・クーパー、リンゼイ・ダンカン
撮影: ディック・ポープ
ネタバレしてしまうので映画のストーリについては詳しくは書きませんが、
ざっくりいうと、主人公の少年セスの視点で、「性と死」と「妄想と現実」によって変化していく、少年の無垢な心が至妙に描かれています。
この映画の監督・原作は、イギリス人アーティストのフィリップ・リドリー。
自ら画家としても活動していて、随所にワイエスの世界をそのまま映像化したようなアメリカの原風景を忠実に再現しています。
その映像美とストーリーの内容から(ホラー的な要素はおいといて)、ワイエスの「マジック・リアリズム」の世界観を感じる、カルトムービーだと思います。
興味のあるかたは是非。(絶版のため新品だと高額になってます)
※ショッキングなカットもありますので、ご注意を。
ワイエスの残した「やさしい時間」に触れてみてください
いかがでしたでしょうか。
アンドリュー・ワイエスについて、つらつらと書いてみましたが、興味のある方はぜひその作品に触れてみてください。
ワイエスの残した「やさしい時間」を感じることができると思います。
ではでは。
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