少年少女発明クラブとは
子どもたちの夏休みも残り僅かとなりました。毎年この時期になると、楽しみなことがあります。それは、「少年少女発明クラブ作品展」に応募する作品をムスコと一緒に作ることです。
子どもにとっては「夏休みの宿題もあるのに、正直めんどくさーい」のかもしれませんが、結果的には毎回、親子そろってテンション高めになります。
「少年少女発明クラブ」とは、小学生から中学生までの児童が参加する課外活動で、地元の企業や市民ボランティアを中心に「子どもの夢と創造性を育てる」をモットーに活動している団体です。
基本的には週一回開講していて、カリキュラムにそった作品作りを通じて、工具の使い方や簡単な機構なども教わりながら「モノづくり」の技術と発想を養い、年に数回ある作品展や発明コンテストへの参加意欲を高めるようサポートしています。
ジブンの住んでいる地域は某世界的自動車メーカーの御膝元ということもあり、教えてくれる講師の方もそのOBがほとんど。
協賛企業もそのグループ会社がずらーっと名を連ねているので、いろんな意味で充実しています。
そのせいもあってか、年一回のクラブ員募集には何倍もの競争率になるくらい人気のクラブです。
ウチのムスコも小学校一年生の時に申し込みをしたのですが、やはり競争率が高く、地元のクラブとちょっと離れたところのクラブを並行して申し込み、運よく地元のクラブに入ることができました。
少年少女発明クラブ作品展はテンション上がる
ムスコはとくに発明が好きというワケでもなく、ペーパークラフトやミニ四駆などもそうですが、なにかを作ることが大好きで、そんなムスコに負けないくらいオヤジも「モノづくり」が大好きです。
なので、毎年夏に行われる「少年少女発明クラブ作品展」の時期になると、「今年はナニ作る?」とムスコと一緒にあーだこーだいながら、テンション高めで取り組んでいます。
もちろんムスコ主体ですよ、もちろん。ムスコも小学3年生になり、作品展の参加も今年で三回目。そこで、過去二回の出品作品をふりかえってみようと思います。
小学一年生「蚊トリング砲」
発明クラブに入って初めての作品展。どんな作品を作ろうか悩んでいるムスコに、オヤジから「いま困ってるコトから考えてみてみ」とアドバイス。
夏の時期ということもあり、蚊にさされやすい体質のムスコが思いついたアイデアが、
「蚊をやっつける機械をつくりたい」
うーん、単純!でもそれでよし!
「でも、蚊をやっつける機械ってどうやって作るの?」と煽ってみると、
「蚊取り線香あるじゃん、それを吸ってストローで吹き付ける」
うーん、自殺行為!しかも機械じゃないし。
「蚊取り線香は空気中に充満するから蚊をやつけっれるんだよ」と諭すと、
「じゃあ、吹き付けても死なないの?」
「・・・それはやってみんとわからん」
子どもの「疑問力」は時に親を困らせます。
ただこの純粋な疑問が「実際に殺虫プレーみたいに吹き付けたらどうなるんだろうか」という、「疑問力」が「発想力」に変わる瞬間です。
「じゃあさ、でんじろー先生の空気砲みたいに飛ばしてみようよ」
うーん、アナログ志向!
でも、それ面白いかも。蚊取り線香の煙をためて空気砲で発射する。ビジュアル的にも面白い。
さっそく、ムスコと一緒に空気砲の製作にとりかかる。段ボール箱を丸くりぬき、蚊取り線香を中に入れ蓋をして5分待つ。煙が充満したところで、蓋を開けて箱の横っ腹をドン!
「ぽわ~ん」
「出た!蚊取り線香の空気砲が出たっ!」
ムスコと二人で歓喜の瞬間でした。もうこれでできたも同然。ただし、使用上の注意事項があります。
- エアコンや扇風機による空気の流れがあると威力を発揮できません。
- 蚊を見つけても、蚊取り線香の煙をためるのに5分かかるため見失う可能性があります。
- 空気砲のスピードは蚊の早さには勝てません。蚊が飛ぶ方向の予測が重要です。
まぁ、子どもの考えることですから、実用性に関しては多めにみてやってください。
「名前はどうする?」蚊取り空気砲、蚊取り線香砲、ガトリング砲、…!
「蚊トリング砲ってのはどう?」
これは完全にオヤジのアイデアです。ごめんなさい。
ということで、はじめての作品は「蚊トリング砲」で決定。
で、はじめての作品展の結果はどうなったかというと、
な、なんと「優秀賞」をいただきました!でかしたぞムスコ!おめでとう!
正直、こんな実用性のない、ウケ狙いと思われてもおかしくない作品で賞がもらえるとは思ってもなかったので、家族一同おどろきでした。
授賞式の晩は、ムスコの大好きなスシローでお祝いしてあげました。
小学二年生「ふみッシュ」
世の中はコロナ禍の真っ只中。公共の施設から近所のスーパーやショッピングモールまでもが「消毒液」を設置しています。
ただ、どこへいっても当時はまだポンプ式が主流で、手でポンプの頭を押さないと噴霧しません。
誰に似たのか潔癖症のムスコは、そこに疑問を持ち、
「手で触りたくない」
「じゃあ、手でさわらなくてもいいモノを作れば?」
ただ、実際にはもうすでにありました。公共の体育館でみたやつは、木でできた家具みたいな仰々しいもので足で踏んで噴霧するモノ。
「これをもっとカッコよくてコンパクトなもので作ってよ」
ということで、今年は現在あるモノに対してこちらから要件を与える形で、時勢ニーズに即した作品の製作がスタートしました。それもよしとしましょう。
アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
ジェームス W.ヤング
なのですから。
ムスコは体育館にあったものと同じように木材で作ろうと考えていたようで、それだとパクリでしかありません。
そこで、オヤジの大好きなホームセンターにムスコを連れて行き、材料になりそうなモノを物色。大人発想だと塩ピパイプとかくらいしか思いつかないのですが、そこはホームセンター、なんでもあります。で、ムスコが目につけたのがコレ。
「G–Fun」
アルミ製のフレームと豊富なジョイントパーツで構成されており、六角レンチひとつで様々な形状に組立できる、ちょっとおしゃれなDIYパーツ。
パーツが並んでいる陳列棚の前で、「ポンプを押すところはこれとこれでL型にしよう」とか、「足で踏みつけるところは、これにバネをつけて戻るようにしよう」などと、ムスコとふたりで機構のアイデアを出し合いながら、結局七千円以上の買い物になりました。
帰ってからヨメにはド叱られましたが、さっそくムスコは六角レンチを手に取り製作開始。
オヤジははたから見てるだけで、小学生でも簡単に組み立てられるこの「G–Fun」のすばらしさに感動。そして、ほぼムスコ一人で一日もかからずにできたのがコレ。
要件通り、カッコよくてコンパクト。しかも今回は実用性もありニーズにも即した作品になりました。
ふんでシュッと出るから「ふみッシュ」。今回、名前はムスコが決定。
で、これを出品受付にもっていった時、講師のみなさんがこぞって寄ってきて、「これどこで売ってるの?」とか「いくらぐらいするの?」など、もっぱらG–Funに興味津々でした。
そして、今回の結果はというと、
「奨励賞」をいただきました!でかしたぞ、ムスコ。
というか、今回はアイデア作品という点ではすでにあるものをアレンジしただけ、しかも「G–Fun」の商品性ありきだったので、賞はもらえないと思ってましたが、クオリティが評価されたんですかね。
このG–Funの公式サイトでも「解決!G–Fun DIYアイデア大賞」という公募もやってたので、ついでに応募しちゃいました。
結果は残念でしたが、500円のQuoカードがもらえました。ラッキー。
作品展の数か月後、ツイッターでこんなツイートを発見。
某世界的自動車メーカーが「しょうどく大使」なるものを発表してました。その姿、構造がなんと「ふみッシュ」くりそつ。
地元だし、発明クラブの講師はそこのOBだし、しかも「G-Fun」使ってるし。まさかね、と思いつつもムスコにいってあげました。
「キミの発想はト〇タの先を行ってたぞ」と。
小学三年生「テーブル清掃車」
そして今年、小学三年生になったムスコが、今回はゼロからジブンで考えました。
「今年は作品どうするの?」と聞くと
「テーブルの上のゴミをキレイに掃除するヤツを作る」
と、ジブンから発案してきました。
子どもたちはいつも、食卓のテーブルで勉強をしているのですが、テーブルはいつも消しゴムのカスがいっぱい。また、妹の食べ散らかしが酷いので、いつもヨメに叱られているのも気にしてたんでしょうね。
「で、どうやって作るの?」
「道路の清掃車みたいに掃除するやつ」
なるほど。掃除機みたいに吸い取るのではなく、ゴミを掃いて集めるという発想ね。
そこで、今回はオヤジの好きな「ダイソー」にムスコを連れて行き、材料になりそうなモノを物色していると、さっそく見つけました。
ムスコの考えた「車」と「掃く」のアイデアをかけ合わせると、これが使えるんじゃないと見せてみると、
「これをタイヤの軸にしてブラシで掃除できるね」
ナイスです。オヤジもそう思ってました。かき集める部分はこれもダイソーのプラスチック製の箱を塵取りみたいにすればよし。
車のボディー部分はこれもダイソーのMDF材を切って箱型にする。部材はほぼダイソーで揃いました。
ただ、ゴミを集めるだけなら、テーブル用の塵取りもダイソーに売ってるので、わざわざ車型にする意味もない。そこで、今回は、
「ゴミを集めなるだけじゃなくて、他にも便利なコトがないと」と付加価値を考えさせました。
うーん、と悩むムスコにヒント。
「テーブルのゴミって、ママはどうやって集めてる?」
「ママが雑巾でふきながら集めてる…。あ!これに雑巾をつけよう」
ナイスです。オヤジもナイスアシストです。
ムスコは雑巾のかわりに「スポンジ」を取り付けるようにしたいと考えました。なるほど、これなら取り付けも簡単にできそうね。もちろん、ダイソーにあります。
今回の材料費は千円も超えることなく揃いました。さすがダイソー。
そして今回は、しっかりと設計図を描かせて、段ボールで試作も作るように促し、発明クラブで教えてもらったノコギリの使い方や木の箱の作り方も活かしながら、さらに電動ドリルの使い方も教えて、企画・設計・製作まで、ムスコひとりでやりきりました。
そんなムスコを見て、子どもの吸収力ってスゴイなと思いながら、成長していく子どもの姿にちょっとだけ目頭が熱くなりました。ジーン。
で、できあがったのがコレ。
動画ではよくわかりませんが、ちゃんとスポンジでテーブルもふいてます。
翌日、作品の提出に行きました。去年までと違い、今年のムスコはジブンから率先して作品の説明をしてました。ゼロから考えて作った自信の現れですね。ここでも目頭ジーンです。
そして昨日、作品展の発表がありました。果たして今年の審査結果やいかに!
「入賞」をいただきました!
「優秀賞」→「奨励賞」ときて今年は「入賞」。今回もランクは落ちたけど、そんなことは関係なく、胸をはって自慢できる作品を作ったコトに意義があると思ってます。
オヤジからも「目頭ジーン賞」を授与します。
小学四年生「ちょうちんあんこうハンガー」
作品展の出品も4年目となれば、そろそろ自分から率先して作品作りに励むだろうと思いきや、余裕かまして、結局出品ギリギリになってわちゃわちゃしだす息子。
「ねぇ、なにかアイデアない?」じゃねーよ。自分で考えんかコラ。
「自分が困ってることとかないの?ママにも困ってることないか聞いてみ」
といってみたものの、発明で解決できる困りごとはそんな簡単には出てこない。
仕方がないので過去の作品からなにかアイデアをパクろう参考にできればと、パソコンで検索させてみてもヒントになりそうなネタは見つからなかった様子。
その時期、洗濯物がなかなか乾かない天気の悪い日が続き、ヨメが洗濯物を取り込みながらボソッと一言、
「またジーパンのポケットが乾いとらんわ」
ジーンズではなくジーパン、しかもコテコテの名古屋弁で。それを聞いたワタシは息子にこう促した。
「ほら、困りごとあったやん」と。
息子とワタシはそのヨメの一言をきっかけに、あーでもないこーでもないと、部屋干しの洗濯物を眺めながらディスカッション。
「物干し竿に扇風機つけて風を送ったら?」
うーん、それはただ扇風機使っとるだけやん。風を送るという発想は理にかなっているけど、世の中にはそういう家電もある。
「なんでジーパンは中まで乾かんのやろね?」
と息子に問いかける。
ムスコ「布が分厚いから?」
ワタシ「からの?」
ムスコ「からの?・・・中まで風が通らんから?」
ワタシ「からの?」
ムスコ「風が通るようにする!」
ワタシ「する! からの?」
ムスコ「パパ、ウザい!」
ワタシ「・・・」
このウザがらみ作戦が功を奏したのか、息子が部屋の隅っこを指さしてこう言った。
「あの提灯みたいにふくらませたら風が通るかも」
あの提灯とは、我が家にあるイサム・ノグチの「AKARI」である。
そう、そーゆーこと。お父さんはそれを伝えたかったんだよ。
さっそく、提灯のようにジーパンを膨らますにはどうしたらいいかと、針金ハンガーを手に取りガチャガチャと試行錯誤が始まった。
ハンガーの頭の部分をペンチで切り取って楕円形の輪を作り、それを提灯の水平軸にする。そして、垂直軸のハンガーに針金でジョイントすることで提灯構造ができあがった。
「なんか、ちょうちんあんこうみたい」
「ちょうちんあんこうハンガー」の誕生である。
そのプロトタイプをもとに、ジョイント部分を金具と針金で強化し、垂直固定部分は試行錯誤の末、タコ糸で引っ張りることで固定した。
「できた!」と、ママの一言からわずか3時間足らずで完成してしまった。
果たしてこれでいいのだろうか?
私たちは、成功とは仕事に費やした時間の質ではなく、
費やした時間の量の結果だと勘違いしている。
アリアナ・ハフィントン(実業家)
そう、そーゆーこと。時間かけりゃいいってもんではない。と、ジブンを諭した。
で、できあがったのがこれ。
この「ちょうちんあんこうハンガー」、ジーパンなどのズボンを干すだけでなく、提灯部分をたためば通常のハンガーとしても使用でき、ひろげればタオルやハンカチなどもまとめて干すこともできる。意外といい作品ができあがったのではないかと思う。
一週間後、無事に作品を提出し、あとは結果を待つばかり。
「今年も賞とれるかなぁ」と、作品展示会場に行ってみると・・・
なんと「奨励賞」をいただきました!
小学一年生から「優秀賞」→「奨励賞」→「入賞」ときての「奨励賞」。
作品の前で「よしっ!」とガッツポーズをする息子。4年連続受賞の目標も達成できたことがさぞ嬉しかったんだろう。
そんな息子を見て、またしても目頭ジーン。
ただ、やっつけ感が漂う今年の作品作り。来年が心配になってきた・・・。
(来年につづく)
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